救命救急センターを維持・整備していくために

救命救急センターの整備には人員の確保や受け入れ態勢など様々な困難がありま
す。このページでは、日々、救命救急の場に携わる医師の想いを特集します。

特集の目的・内容

救命救急センターは、脳卒中や多発外傷など二次救急では対応できない複数の診療科の領域の重篤な救急患者を受け入れ、高度な医療技術を提供する三次救急医療機関です。地域の命を守るためになくてはならない施設ですが、その整備には人員の確保や受け入れ態勢など様々な困難があります。日々、救命救急の場に携わる医師に想いを聞いてみました。

センターを維持していくための困難・課題

26年が経ち、昔よりは人員の確保や環境は整備されてきましたが、より一層十分な人員を確保し切磋琢磨して環境をよりよくしていくことが今後の課題となっていきます。

救命救急の場に携わる医師の想い

センター長インタビュー

インタビュー・撮影/2019年12月19日(木)

センター長

救命救急センター長
田代 晴彦

 当院は平成6年に県内では2番目に救命救急センターの指定を受けました。現在では年間5,000件ほどの救急車を受け入れ、救急要請の応需率(※)も約98%という高い数値を誇っています。しかし今でこそ、このようなしっかりとした仕組みができていますが、救急科が無かった頃は各診療科を担当する医師が順番に救急患者を診るという対応しかできていませんでした。そこから協力してくれる医師が増加し、今の仕組みができているのは素晴らしいことだと感じています。

 救命救急センターの仕組みを作る上で、重要な二つの要因があります。まず一つ目は「医師の意識改革」。やはり医師の協力なしでは高度な医療を提供することはできません。現場に慣れることなく、毎回、救命救急の必要性を確かめながら業務に携わってもらうことが理想的です。そして二つ目は「サポートができる体制」です。いくら一人の医師が救命救急の重要性を理解し自分の力を十分に発揮したところで、できることはしれています。その上、一人で受け持つということは負担がかかりすぐに壊れてしまうものなのです。北勢地区の救急を担う我々は、医療の提供を今後も続けていかなければなりません。そのためには一人が頑張るのではなく、人に頼み、お互いがサポートできる体制づくりが重要なのです。それにはもちろん言葉だけではなく実際に動き、全員で「負担がかかっても仕方がない」という空気を壊していくべきだと感じています。

 救命救急

 救命救急医療では、病院まで来てくれる患者に対応していくだけでは追いつかない現場があります。事故や病気が発生してから救急車を呼び、病院に到着するには少なくとも十数分の時間がかかってしまいます。この時間が長くなるほどに、存命の確率は下がります。そのために待っているだけではなく、こちらからその場へ向かい治療を行う攻めの医療が必要です。これを担っているのがドクターヘリです。医療過疎地域ではこのドクターヘリの活躍がとても有効でしょう。北勢地域は人口・病院が密集しているためドクターヘリの要請は少ないようです。しかしそんな地域でも急を要する事故や病気は発生します。その命を救うためには、1分1秒を争う現場に迅速に医療が届けられるドクターカーが有効であり、検討課題であると思います。

 設置から26年が経ち、当時と比べるとはるかに人員や環境は整備されてきました。しかしこれで完成ではありません。仕組みとしての器ができましたので、中に入ってくれる人が増えてくれることが、これからの希望です。人員が十分に確保され、お互いが切磋琢磨しあえる環境がつくれるよう、絶えず医療スタッフの皆の様子を見ながら、改善を積み重ねていきたいです。救急救命は医療の中でも、特に命と向き合い緊迫する現場です。携わる医師や看護師の努力が報われ、そして患者様の命が救えるように自身のセンター長の役割はもちろん、救命救急センターの役割に努めたいと思います。 

(※)応需率…消防本部による傷病者の搬送依頼に対して、医療機関が受け入れた割合

救命救急センター副センター長 インタビュー

副センター長

救命救急センター
副センター長
伊藤 秀樹

以前に比べ、救命救急センターを構成する医師の人数は増え、とても助かっています。いまでこそ、救急に興味を持つ医師は増えましたが、三重県自体に救急の文化がありませんでした。そもそも救急医療とは交通事故者数が急激に増加した交通戦争を経て、大阪と東京の大学がそれぞれ救急部を立ち上げたことが発端とされています。そこから徐々に広がり、ようやく10年ほど前に浸透してきたのではと感じるほどですので、今はまだまだ伸びゆく途中の段階です。片手間で携わっては救える命も救えません。これからさらに救急医療に携わる医師が増えることを一番に願います。

救命救急

救命救急センター副センター長 兼 救急・集中治療科部長 インタビュー


救命救急センター
副センター長 兼
 救急・集中治療科部長
山本 章貴

 数と質の担保を目指して日々医療に取り組んでいます。患者の受け入れ件数は増えていますので、これを継続し、さらに多くの患者が受け入れられるよう攻めの医療を行いたいと思っています。質では、周りの負担にならないようにすることが目標です。救命救急センターの医師はもちろん、他の診療科を担当する医師も含めて、負担がどちらかだけにかかるのではなく、お互いがサポートすることでwin-winの関係を築きたいです。集中治療では24時間365日の管理が目標です。そのためにも若手の医師へ成功体験を伝え、救急医療の魅力を感じてもらうようマネジメントにも力をいれて取り組んでいきたいと思います。

救命救急

救急・集中治療科 医長 インタビュー


救急・集中治療科 医長
大木 基通

 人員は増えてはいますが、さらなる人員拡充が必要だと感じています。救急医療の中でもER型(※)という機能を担っており、それを踏まえた体制づくりをしています。これから人員を募集するにあたり、このような個々の強みがあった方が有利となるのではと考えています。高い応需率を維持するのはもちろんですが、そのために生じている負担を軽減することも大きな課題です。他にも課題は多いのですが、自分が目指す方向と病院としての役割をすり合わせて救急医療を活性化させていきたいです。

(※)ER型…emergency roomの略。重症度などによらず、全ての救急患者に対応する診療型

救命救急


救急・集中治療科 医長
冨田 正樹

 普段は救急外来や集中治療などに携わっていますが、病院の外にも飛び出し、医療を提供することもあります。当院は地域のモータースポーツイベントなどにおいて医療のサポートを行っており、現場での処置だけではなく搬送中での対応や集中治療においても全て携わり、一貫したつながりを持っています。これは病院としても受け入れしやすく、情報共有が速やかにできることで大きな安心へと繋がっています。これは当院の救急医療でも大きな魅力の一つです。今後は経過を現場へフィードバックし、さらなる安心への取り組みを実現をしたいと考えています。

 

救命救急集合

災害時の役割

災害時の医療を守るために ──災害派遣医療チーム「DMAT」

 DMATとは大規模災害や多傷病者が発生した事故が起こった場合、現場活動を行う専門的な医療チームのこと。当院では昨今のように災害時の医療が重視されていない頃から訓練を行ない、組織化し、有事に備えています。基幹災害拠点病院として、三重県内はもちろん、全国で医療救護活動が行うことができるよう態勢を整えています。

 救命救急

撮影/2018年11月17日(土)
  防災訓練の様子

認定看護師

認定看護師とは

認定看護師制度は、日本看護協会で習得条件が定められた制度であり特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。

詳しくはこちら (看護部サイト)

 

功労者として県知事表彰されました!

救命救急センター師長

この度、奥田美香救命救急センター師長(急性・重症患者看護専門看護師)が救急医療功労として三重県知事より表彰を受けました。これは救急医療活動についての功績が顕著であった個人や団体が表彰されるものであり、救命救急センターとしても誇らしい限りです。経験豊富な看護師にも支えられて、日々、救命救急医療を提供しております。