来院される方へ2021.1.15 [金] UP / 2021.1.15 [金] 更新

三重県立総合医療センター産婦人科における不適切な事案について

 地方独立行政法人三重県立総合医療センター産婦人科において行われていた過去の手術におきまして、平成26(2014)年4月1日から令和2(2020)年8月31日までの間に、112件の不適切な事案が判明しました。

1.不適切な事案の内容

 事案の内容は以下の5つに分類されますが、いずれも保険診療では請求できない腹腔鏡を用いた悪性腫瘍の手術であり、腹腔鏡により手術を行ったにもかかわらず、保険診療にできるよう術式を開腹手術として請求するという不適切な内容でした。

  1.  病理医が不在の期間(2016.4.1~2018.3.31)は腹腔鏡による手術の保険診療が認められないにもかかわらず、腹腔鏡により手術を行い開腹手術として診療報酬を請求していたこと。(58件)
  2. 腫瘍専門医の資格を有していなければ腹腔鏡による手術の保険診療が認められないにもかかわらず、資格がないまま腹腔鏡で手術を行い開腹手術として請求していたこと。(7件)
  3. 保険診療上腹腔鏡では認められていない子宮けいがん及び卵巣がんの手術を腹腔鏡により行い、開腹手術として請求していたこと。(40件)
  4. 子宮けいがん及び子宮体がんのうち、腹腔鏡による手術が認められていない病期の患者の手術を腹腔鏡で行い、開腹手術として請求していたこと。(6件)
  5. 先進医療として自費診療であれば認められていた腹腔鏡による子宮けいがんの手術を、開腹手術として保険診療請求していたこと。(1件)

2.経緯

 内部の職員から令和2年夏頃に不適切な事案に関する疑義が呈され、8月に院内調査を開始、9月に第三者を含めた検証委員会を設置し、3回(10/23、11/6、12/11)にわたり検討を進めました。いくつかの症例を調査したところ不適切であると指摘があったため、さらに調査を進め、112件の不適切な症例があることをこのたび確認したところです。既に東海北陸厚生局に報告し、返金等今後の対応について相談しているところです。

3.事案の発生原因

 事案の発生原因の主なものとして以下の3点が考えられます。

  1. 医師の診療報酬制度に対する理解不足があったとともに、関係学会の示すガイドラインを遵守していなかった。加えて、保険診療上認められる術式で請求したという点で倫理的に問題があった。
  2. 産婦人科医師等スタッフ間で情報共有や手術についての十分な議論がなされておらず、問題点が明らかにならなかった。
  3. 事務部門において診療報酬請求上の手術名と実際に行った手術名との整合性をチェックする体制が不十分であった。

4.事案発生後の対策について

 今回の事案が明らかになった令和2年8月以降、医療安全確保及び診療報酬事務の適正化の観点から、以下の点について、すでに取り組んでいます。

  1. 産婦人科の手術に関しては、他診療科の医師も症例について事前に把握し、問題ないと認められたもののみ手術を行うよう許可制としたこと。
  2. 産婦人科内の手術前のカンファレンスについては、医療安全管理部の職員が同席し、十分情報共有が行われていることを確認するようにしたこと。
  3. 適正な診療報酬請求事務について、事務部門に対してあらためて徹底したこと。

5.最後に

 今後、該当する手術に関係した患者の皆様には、東海北陸厚生局との協議と並行して、順次ご説明、医療費返還の手続きを進めさせていただきます。

 なお、現時点で手術後の体調不良等についての相談等は今のところございませんが、問い合わせがございましたら適宜対応させていただきます。

 今回の事案発生に関し、患者・ご家族の皆様をはじめ、当院に関係する皆様には大変ご迷惑をおかけすることとなり誠に申し訳ございません。今後は病院一丸となって皆様の信頼回復に努めて参ります。